Business & Society - Yaleにおける社会的インパクト投資Impact Investmentの取り組み

 初めまして。SOM1年生のDIです。 先日のアジアビール祭で未だ二日酔い気味ですが、本日は、少し真面目なトピックで行きたいと思います。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますがYale SOMには、BusinessとSociety両方の分野におけるリーダーを育てるというミッションがありまして、社会貢献に対する学生の意識も非常に高いです。クラスメイト達のバックグラウンドは、経営コンサルタント、投資銀行、事業会社、NGO、公務員、芸術関係等、多岐に渡りますが、バックグラウンドに関わらず卒業後は何らかの形でビジネスを通じて社会に貢献したいという思いを持っている人が多いです。そのような意識を持っているSOM学生達の間で、最近とくに関心が高いのが、Impact Investment(社会的インパクト投資)の分野です。
 Impact Investmentとは、貧困、教育、福祉、環境、人種差別といった社会問題の解決に貢献するビジネスに対して投資し、社会的リターンと経済的リターンの両方を追求する投資のことを指します。アメリカでは2000年代に入ってから、経済的リターンに加えて社会的リターンも生み出すビジネスに特化した投資アプローチとして、Impact Investmentが定義され始めました。今では、社会的インパクトを生み出す社会起業家や大学発ベンチャー等へのベンチャー・キャピタル型投資を専門に行なうImpact Investment Fundが多く立ち上がっており、アメリカのMBA学生の間では非常に人気の高い就職先の1つとなっています。Impact Investment Fundの投資先は、開発途上国のSocial Entrepreneurから米国における環境系ベンチャーまで多岐にわたります。
 就職先としての人気の秘密は、多くのファンドがベンチャー・キャピタル型のビジネスモデルで運営されており、MBAで学んだハードスキルが活かすことができることと、Impact Investment Fundが社会起業家に対してハンズオンの投資をし、投資先企業の日々の業務改善から長期的な成長戦略までアドバイスするため、キャリアの早い段階から現場に近い立場でリアルな社会貢献が可能であるからだと思われます。
 そんなImpact Investmentのキャリアを目指す学生のためのトレーニングの場として2011年に立ち上がったのがMIINT (MBA Impact Investing Network & Training)です。これは学生達が4-6人程度のチームを組んで、Impact Investment Fundの立場になり、 自分たちの手で見つけてきた社会起業家の事業を、実際の投資家達に売り込むピッチ・コンペティションを行なうものです。優勝チームが 発掘した企業 は、投資家達から5万ドル+αの投資を受けることができるというものです。具体的には 、シードステージあるいはアーリーステージにあり、成長のための資金を必要としている社会起業家を、各学生チームが米国内のみならず世界中から発掘し、ビジネスモデルの審査(デューデリジェンス)、当該企業の株式価値のバリュエーションを実施した上で、提案書にまとめプレゼンテーションを行い、それを審査員たる投資家達が審査して優勝チームを決定します。アメリカと欧州のMBAトップスクールが各校に支部を持っており、毎年冬に各スクールで学内予選を行い、各校の優勝チームが春に開催されるMIINTの全米大会に集まり、その大会での優勝チームの選んだ企業が実際に投資家から投資を受けることができます。
 前置きが非常に長くなりましたが、SOMの1年生として、Yale SOMにおけるMIINTに参加した経験をお話したいと思います。まず、各校5チーム程度作って学内予選があるので、毎年25人程度しか参加できないのですが、人気のある活動のため、まず情熱?やバックグランドに応じた学内のメンバー選考があります。活動は最大で6ヶ月に及び実際の社会起業家と仕事をするので、就活や勉強もあるなか、MIINTに対して相応のコミットメントが要求されるからです。選ばれた25人はそれぞれの関心分野に応じて自由にチームを作ります。例えば、今年のYaleにおけるMIINTメンバーは、環境、農業、教育、国際開発、 Financial Inclusionなどのテーマに分かれてチームを作りました。私は、Yaleがニューヨークに近いこともあり、当地のFintech企業でFinancial Inclusionに取り組んでいるような企業に関心があったため、Financial Inclusionのチームにjoinしました。
 Financial Inclusionのチームのメンバーは、バックグラウンド・国籍ともに多様で、経営コンサルタント、ファイナンス、VC、Non-profit、公務員で、1・2年生が混ざった構成となりました。講義が終わる夕方以降や夜に集まり、自分たちの投資アプローチ(investment thesis)や投資先企業の選定基準を議論していくことから活動は始まります。次に、それぞれがもつネットワークや知見を活かし、起業家を発掘(sourcing)する段階に入ります。コールドコール(メール)を数多く行い、電話でMIINTの活動とMIINTチームと仕事をすることのメリットについて売り込み、多くのCEOから「関心がない」等と断られながら、最終的に一緒に仕事をする企業を絞り混んでいきます。この間、Impact InvestorやVC投資家に必要なハードスキル(sourcing、due diligence、valuation)を勉強するためのMIINTのオンライン講義を毎週受けることができます。
 最後の段階でショートリストした数社は、アメリカ、日本、フィリピンと世界中のSocial Startupで、どれも非常に魅力的なビジネスモデルとポテンシャルを持っている企業で、最終的に1社を選ぶのは非常に苦しい決断でした。(日本人としては途上国でソーシャルビジネスを立ち上げる有望な日本企業と仕事をしたい気持ちもありました。)チーム内で投票の結果、アメリカのマイノリティー人口(黒人・ヒスパニック等)向けに、適正な利率で学生ローンを提供することを目的に設立された米国のFintech企業と一緒に仕事をすることになりました。
 投資先候補となった企業は、Big data解析に基づき、CEOは非常にエネルギッシュで、オペレーションの立ち上げと資金調達で多忙を極める中、非常に丁寧に我々MIINTチームに対応してくれました。投資銀行出身で、自らも裕福でない家庭で育った黒人女性として、苦労しつつキャリアを積んできたCEOは、数年前に銀行を退職し、自らの長年の問題意識であった米国のマイノリティー人口のFinancial Inclusionに取り組むため、起業を決意しました。Big data解析を使い、借り手である低所得者層出身の学生の信用リスクを低減しつつ、公的金融機関を通じた低利融資も提供することによって、マイノリティー層の大学進学率の向上を目指すビジネスモデルは画期的に思われました。チームメンバーはそれ以上に、CEOのいつも明るく前向きな人柄にも魅了されました。
 学内予選のピッチコンペティションに向けては、それぞれのチームメンバーが自身のバックグラウンドを活かして、情報収集、事業リスクの分析、財務分析、株式価値評価を行い、プレゼン資料にまとめ、投資先候補企業のCEOとも直前までディスカッションを重ねながら、メンバーで集まって連日深夜まで準備を進めました。惜しくも学内予選の大会で敗れ、全米大会には進めず悔しい思いをしたものの、ユニークな経験とスキルセット、そしてパッションを持つチームメンバーや、投資先候補企業の選定の過程で話をした数多くのスタートアップの魅力的な創業者達から多くを学ぶことができ、非常に良い経験になりました。